Works: 村田早耶香/青木健太「You can change the world」

1970年代から20年も続いた内戦による痛手を乗り越えて、復興への道を歩んでいるカンボジア。最近では日本からも、毎年多くの人々が、世界遺産のアンコール遺跡などを訪れるようになった。

しかし、そのカンボジアでは以前から、児童買春が深刻な社会問題となっている。地方の農村などで貧困に喘ぐ人々は、生活していくためのお金を得ようとして、自分の子どもを買春宿に売り払ってしまうのだ。また、騙されて買春宿に連れてこられ、強制的に働かされる子どももいる。そういった1万5000人にも上る被害者を出さないようにするために、買春の被害に遭う危険性のある子どもたちを保護し、経済的に自立できるようにサポートすることを目的に活動しているのが、日本のNPO法人、かものはしプロジェクトだ。

「学生の頃、あるNGOのツアーに参加して初めて東南アジアに行った時、現地の子どもたちの笑顔が本当に素晴らしくて、この子たちをサポートしたい、と純粋に思ったんです。でもそれと同時に、幼い頃に買春の被害に遭ってHIVに感染してしまった女性や、その女性から母子感染してしまった子どもに出会ったりして‥‥」と、同プロジェクトの代表理事の村田早耶香さんは、プロジェクトを立ち上げるきっかけとなった体験を振り返る。

「たとえば、しばらく後に私がカンボジアで会った12歳と6歳の姉妹は、電気ショックを与えられて強制的にお客を取らされていたので、腕にたくさんの傷跡が残っていました。保護された後も、夜はその時のことを思い出して、泣き叫んで眠れないでいたそうです。自分よりもはるかに幼い子どもたちがそういう目に遭っていたことを聞いて、一刻も早く対処しなければいけない、これ以上こういう子どもを増やしてはならない、と思うようになりました。何かせずにはいられなかったんです」

そんな問題意識を抱えて悩んでいた村田さんはある日、とある起業サークルで、現在プロジェクトの共同理事を務める青木健太さんたちと出会う。意気投合した村田さんたちは、数カ月のプランニング期間を経て、2002年7月、教育とITを基盤としたシステムで児童買春防止を目指す組織、かものはしプロジェクトを発足させた。

「カンボジアの貧しい子どもたちには、そのまま貧困の中で生きるか、買春宿に売られるかという、わずかな選択肢しか与えられていません。一度保護されても、しばらく経つと、生活苦のためにまた売春宿に戻ってしまう子どももいます。そういう子どもたちの選択肢を、教育という手段を通じて広げることで、彼らの経済的な自立をサポートしてあげたいんです」と村田さんは言う。

かものはしプロジェクトが目指している具体的な事業モデルを説明しよう。まず、日本で青木さんが統括する同プロジェクトのシステム開発事業部で、システム開発やWebサイト制作などの案件を企業から受注。開発の一部は、カンボジアのIT技術者と共同で行う。それらの事業で得られた資金で、カンボジアに住み込み可能な職業訓練センターを設立。現地NGOと協力して、買春被害に遭うリスクの高い子どもを保護し、センターで基礎学力、英語、PCスキルなどの指導を行う。カンボジアでのオフショア開発は、職業訓練センターの教師のほか、将来的にはセンターでスキルを身に付けて独立したプログラマーの一部が手伝うことになる。

「僕らには経験も資金もないので、他とは違うやり方をしなければなりません。きちんとした事業モデルを作って、やればやるほど活動が広がっていくプロジェクトにしなければ、と考えました。そのためのプランニングには、現地視察も含めてかなり時間をかけました」と青木さんは言う。

プロジェクト発足後、システム開発事業部では官公庁や国内企業からいくつかの案件を受注して実績を残し、カンボジア人プログラマーと実験的に行ったシステム開発も成功させている。その一方、プロジェクトでは昨年6月、カンボジアの首都プノンペンに現地事務所を設立。現地の4つのNGOと協力して、そのNGOが保護している29人の子どもたちに3カ月間のパソコン教室を実施するなど、徐々に現地での活動基盤を整えつつある。

「現地事務所の設立は予想以上に大変でした。プノンペンは治安が悪いので、セキュリティの確保がすごく重要なんです。鍵を30個くらい付けたり、セキュリティガードを雇ったりしなければなりませんでした。でも、実際に事務所でパソコン教室をやってみて、子どもたちに教えるのに何が必要なのか、少しずつわかってきた面もありますね」と青木さん。

プロジェクトの活動で苦労している点は?

「まず、現地とのコミュニケーションの難しさですね。やっぱり距離が離れているので、押さえておくべきことが伝わらなかったりして、なかなか大変です。あと、困っているのは人の問題です。現地スタッフを選ぶのも大変なんですが、国内でも人が足りません。システム開発事業部は現在6名で運営していて、2件くらい仕事が来ると目一杯になってしまうんです。そういう時に仕事を外注できるフリーランスの方などは、積極的に募集しています。また、営業などのスペシャリストも確保したいと思っています」と青木さんは言う。

実際に現地に職業訓練センターを設立し、本格的に子どもたちを保護・教育して自立させるまでの道を築くには、さらなる困難が伴うことが予想される。この記事を読んで、かものはしプロジェクトの活動に興味を持った方は、一度コンタクトを取ってみてはいかがだろうか。ほんのちょっとした協力が、カンボジアの子どもたちの瞳に光を甦らせるきっかけになるかもしれない。

(「Web Designing」2005年4月号)

About Me

  • Author : yama_taka
  • フリーランスの編集/ライター/フォトグラファー。旅と写真と自転車をこよなく愛する、生まれながらの根無し草。
  • Read more »

Works

  • これまでに執筆を手がけた書籍や雑誌に寄稿した主な記事など。
  • Read more »

Portfolio

  • ラダックなどへの旅の中で撮影した写真のポートフォリオ。
  • Read more »

Bicycle

  • 我が愛車、ブロンプトンM3L RAW シマノインター8改を紹介。
  • Read more »

Snap

  • 潮州

  • 馬さん特製・海老のマヨネーズ和え。超うまかった。
  • (June 14, 2010 3:56 PM)
  • Read more »

Monthly Archives