Works: 遠藤幸作「鞄に託して伝えたいこと」

国立商店」という名前のショップをご存じだろうか? 「www.kawaya.com=革屋ドットコム」というドメイン名を見ると一目瞭然なのだが、オリジナルの革製品やモバイル関連のグッズを開発・販売している老舗のオンラインショップだ。開店以来、このショップを切り盛りしているのは店主の遠藤幸作さん。現在は弟さんと二人で、すべての業務を行っている。

国立商店がオープンしたのは1995年のこと。最初はオンラインショップではなく、東京・国立に実店鋪を構えてスタートした。

「僕は昔からバイクに乗っていたんですが、ある時、八王子でバイク用の革のツナギを作っていた職人さんと知り合ったんです。その後、その職人さんが職種変えをするという話になって、だったら一緒に店鋪借りてやっちゃおうか、ということで始めたのが国立商店なんです。でも当初は、タイやインドネシアから輸入した旅行用トランクなどの革製品や、シルバーのアクセサリーをメインに扱う、いわゆる輸入雑貨販売の店だったんですよ」

そんな国立商店が今のようにオリジナルのバッグやモバイル関連グッズを扱うショップに変化していったのは、遠藤さんが根っからのパソコン好きだったことがきっかけだった。

「当時、仕事で使うノートパソコンを持って自宅と店鋪を毎日往復していたんですが、ちゃんとしたバッグがなかったので、ちょっと不便に思っていたんです。それで、一緒に店をやっていた職人さんに頼んで、ノートパソコン用のバッグを作ってもらったんです。そしたら、それがすごく出来がよくて使いやすかったので、試しに販売してみたら評判がよくて、それで‥‥というのが始まりでしたね」

ちょうどその頃、世間はいわゆる第一次インターネットブーム。NetscapeなどのWebブラウザが台頭し、さまざまな夢や可能性がインターネットに託され始めていた時期だった。パソコンが好きでインターネット関連の事情にも明るかった遠藤さんは1996年のある日、オンライン上でも国立商店の商品を販売できないだろうかと思いつく。

「やっぱり、ホームページに画像が掲載できるというのは大きかったですね。それでやってみる気になったんです。最初にオンラインで販売したのは、モバイル用のバックパックとインナーケース、それからトランクだったんじゃないかと思います。すごく面白かったですね」

オンラインショップをオープンしたからといって、ただそれだけでは購入希望者が訪れてくれるわけではない。どのようにしてショップの情報を広めていったのだろうか?

「僕は当時Macを使っていたので、Macユーザーのコミュニティにアピールしてみたんですよ。そうしたらみなさん支持してくれて、雑誌で取り上げられたりもしたので、たくさん人が訪れてくれるようになったんです。最初は、実店鋪とオンラインショップの売上の割合は9対1ぐらいだったんですけど、時間が経つにつれて、急激にその割合が接近していったんです。そのうち、Webだけで展開した方が効率がよくなってきたので、実店鋪を畳んでオンラインショップのみに集中することにしました」

現在、国立商店で扱っている商品は、モバイル対応のバックパックやトートバッグ、ショルダーバッグ、インナーケースの他、アップルのiPod用ケースなどといった細かいアイテムもある。国立商店自体は、製品を生産しているわけではない。基本的には、4、5社の外部メーカーや職人と提携して、オリジナルの製品を共同で企画・開発し、販売するというスタイルを取っている。

「僕は提携先に恵まれたと思いますね。僕自身は何の技術も持っていないんですよ。企画の時は、まず僕から概要やコンセプト、デザインなどを提案して、それを先方が技術や知識からのアプローチでフォローしてくれるという感じです。絵を描きながら話し合いをしたり、サンプルを作って調整したり‥‥。そういう時間は最高ですね。うちのスタンスとしては、僕が欲しいものしか作ってないんです。だからアイテムが少ないんですけど(笑)」

そういった商品開発の傍ら、遠藤さんは週に70件も寄せられる注文に対応して、検品や発送作業を行っている。開店以来、土日も祝日もない状態がずっと続いているという。

「一応、年に一度は店を閉めて、3週間くらいまとまった休みを取って、南の島に行ってゴロゴロしたりはするんです。でも、旅先にもパソコンは持って行くので、結局メールの対応に追われてしまって(笑)。やっぱり辛いのは仕事の不規則さですね。でも、好きなことを始めちゃったから、僕にとっては仕事という感覚じゃないんですよね」

色々と大変なことも多い国立商店の経営だが、今までで一番嬉しかったことは?

「以前、ナイロン製のバックパックを初めて発売した時に、一週間で200件以上も注文が来たことがあったんです。そのバックパックは僕にとっても賭けに近い商品だったんですが、その時はものすごく嬉しかったですね。僕が考えたオリジナルの商品がどんどん売れていく。日本国内だけでなく、アメリカやヨーロッパ、アジアからもどんどんメールが来るんです。たまらないものがありますよ」

国立商店は今、年に3、4アイテム程度の新製品を開発・販売するというペースで運営されている。来年以降には、モバイル&トラベルをテーマにした、国立商店とはまったく別の新しいブランドのオンラインショップを立ち上げる計画もあるという。

「うちの製品を通じて、ジャパンブランドだからこその細かなこだわりや、職人の心意気を感じていただけるととても嬉しいです。時節柄、海外の安価な使い捨てのような製品がもてはやされがちですが、まだまだ日本も、日本の製品も捨てたもんじゃないぞ、ということを伝えていきたいですね」

(「Web Designing」2003年9月号)

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