初めて買ったカメラは、リコーのGR1だった。なけなしの金で買ったそのカメラを持って、僕はメキシコから中米諸国を三カ月かけて巡る旅に出たのだが、最初のうちはGRレンズの28mmという画角が使いこなせなくて、「何だ、このカメラ?」と四苦八苦していた記憶がある。
僕はその後も何度となく、あちこちの国へと旅を重ねた。鞄の中にはいつもGR1が入っていた。広大な風景を切り取る時、街を歩きながらスナップを撮る時、このカメラは素晴らしい能力を発揮した。旅の新鮮な空気の中で、僕は無我夢中になって、ひたすらシャッターを切り続けた。
かつてGR1が占めていたポジションはやがてGR DIGITALとなり、仕事ではニコンの一眼レフを使うようになった。でも、僕が写真を撮る時に心がけていることは、基本的にはあまり変わっていないと思う。
どうすれば「いい写真」が撮れるのか、正直、僕にはよくわからない。それどころか、どんな写真が「いい写真」なのか、その定義さえもあやふやだ。でも、一つだけはっきりしているのは‥‥。
たくさん写真を撮ったからといって、「いい写真」が撮れるとは限らない。でも、「いい写真」を撮っている人の多くは、たくさん写真を撮っている。
テクニック云々より前に大事なのは、「写真を撮ろうとする姿勢」なのではないかと僕は思う。一枚々々に集中しながらも、「あっ、ここで撮りたい!」と思った時に、スッとカメラが出てくるような準備をしているかどうか。軽くてコンパクトなGR1は、そういう準備を本当に楽にさせてくれるカメラだった。
その意味では、GR1というカメラ自体が、僕の写真の先生だったのだと思う。

