ラダックから日本に戻ってきて、今の部屋で暮らしはじめてから、もう一年になる。滞在中から書き続けていた「ラダックの風息」を上梓してからも、はや半年。時の経つのは本当に早い。
出版不況のあおりを受けて、仕事は順風満帆とは言えない。それでも時々雑誌の仕事もしているし、リトスタ本も出したし、今後も本の編集や執筆の仕事が待ち構えてもいる。傍目には、すっかり元のエディトリアル・ライターに戻ったように見えているのかもしれない。
でも‥‥どうなのだろう?
今年の春先の頃からなのだが、モニタを睨みながらキーボードを叩いていると、時々、ぼんやりと考え込んでしまうことがある。人の話をあれこれ聞いたり、いろんな意見や都合をすり合わせたり、それを本や記事にまとめたり‥‥。それが僕の仕事だし、別に嫌だとも思っていない。だが、一切手を抜くことなくきっちり取り組んでいるつもりでも、心のどこかから、こんな声が聞こえてくる。
自分が今、本当に心の底からやりたいと思っているのは、これなのか?
こんな自問自答を繰り返してしまうのは、たぶん、「ラダックの風息」を書くまでのプロセスが、あまりにも大勝負すぎたからなのだろう。ありったけの時間と労力と、それなりのお金と、ついでに命まで賭け金にして挑んだあの大勝負に比べると、それ以降の仕事は、少なくとも命までは賭け金にしていない(苦笑)。賭け金が大きいからといっていい本が作れるとはかぎらないけれど、もしかすると僕は、あの時のようなギリギリの大勝負に、また挑んでみたいと思っているのかもしれない。
たぶん、いつか‥‥。

