「今度、こんな本を出すんですよ!」と、美術出版社の宮後優子さんが目を輝かせながら教えてくれたのが、この「はじめての手製本 製本屋さんが教える本のつくりかた」という本だった。手製本、つまり手作りの本。信州にある工場で手製本を作り続けている家族経営の会社、美篶堂(みすずどう)の方々が、本を自分で手作りするためのさまざまな方法を紹介している本だ。
最初にこの本を手にした時、「うわっ、やられた‥‥!」と、嫉妬にすら近い感情を感じた。なぜなら、この本自体が、美篶堂の方々による手製本なのだ。本文をくるむようにして表紙を貼って折り込むフランス装という手法で製本されたこの本は、しなやかで張りのある紙の質感が心地よい、とても美しい佇まいの本に仕上がっている。セキユリヲさんによるさりげないアートディレクションも、さすがの一言。
本の中では、和綴じの本、上製本、豆本、アコーディオンアルバムの作り方や、文庫本を上製本に仕立て直す方法などが、丁寧に手順を追った写真とともに紹介されている。御茶ノ水にある美篶堂のギャラリーショップで開催されている製本教室で教えられている内容をまとめたものだが、手が不器用な僕でも「道具があればちょっとやってみたいかも‥‥」とうずうずするくらいだから、こういう手作りの作業が好きな人には、たまらない内容なのではないだろうか。
本の後半に収録されている美篶堂にまつわる物語も興味深かった。手製本から機械製本へと向かう世間の流れの中で、あえて踏み止まり、ものづくりの素晴らしさ、大切さを受け継ぎ、伝えていく。その職人としての覚悟と心意気を持ち続けることは、並大抵の苦労ではなかったはずだ。
この瀟洒な本には、そんな美篶堂の方々が伝えたい思いやメッセージが、ぎっしりと詰まっている。一人の編集者として、こんな本に携わることができたなら、どんなに幸せなことか‥‥。売れ行きもなかなか好調らしい。でも、重版が決まったらどうするんだろう? なにしろ、手製本だから‥‥(笑)。

