「未来を写した子どもたち」

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Born-into-brothels.jpgカルカッタは、混沌の街だ。路上にひしめくアンバサダーやバスの合間をぬって、黙々とリクシャーを牽く人夫たち。思わず目を背けたくなるほど痛々しい姿でうずくまる物乞いたち。背中に赤い染料で印をつけられた羊の群れが大通りを闊歩し、慈愛の人マザー・テレサが作り上げた死を待つ人の家の隣では、ヤギが毎日首を刎ねられてカーリー女神の生け贄に捧げられる。1300万人もの人々が暮らすこの大都会は、善くも悪くも、人間のありとあらゆる営みの坩堝と化している。

ドキュメンタリー映画「未来を写した子どもたち」の舞台は、そんなカルカッタの街の中でももっとも暗く、悲惨で、希望の欠片も見つけられない場所――売春窟だ。

女性フォト・ジャーナリストのザナ・ブリスキは、この売春窟の取材に訪れた際、そこで暮らす子供たちと出会う。彼らに未来の選択肢は与えられていない。女の子たちは年端もいかないうちに客を取らされ、男の子たちは闇商売に身をやつすか、盗みを働くようになってしまう。

子供たちの境遇に心を痛めたザナは、彼らにカメラを与え、写真教室を開くことにした。人間のもっとも醜い部分を目の当たりにしながら育ってきた子供たちは、時に鋭く、時に優しい感性で、さまざまな被写体を切り取っていく。彼らを売春窟から救い出して寄宿学校に入れるためにザナが奔走する一方で、子供たちが撮った作品は次第に世間の注目を集めはじめ、やがて、思いがけない道が開ける。だが、現実は決して甘くはなく――。

観終わって感じたのは、この映画はまぎれもなく、希望とは何かを問いかけた映画だったのではないかということ。スクリーンには、やりきれないほど悲しい人々の姿がこれでもかと映し出されるが、その中でピョンピョン跳ね回りながらカメラのシャッターを押す子供たちの笑顔が、すべてを語っていたように思う。一台のカメラが、これほどまでに希望を与えてくれるのだ、と。

白状してしまうと、ラダックから日本に帰ってきて以来、僕はほとんどカメラを触っていなかった。これから先、写真に対してどんな風に関わっていけばいいのか、自分の中に迷いのようなものがあったのだ。でも、この映画を観て、何となく吹っ切れたような気がする。撮りたいと思ったもの、伝えたいと思ったことを、相手の懐にポンと飛び込んで、思うがままに撮ればいい。そうして撮った写真にこそ、人の心を動かす力が宿るのではないかと思う。

エンドロールが終わった後に映し出された最後のワンシーンが、いつまでも胸に残った。

Comments(2)

ご無沙汰しております。
山本さんのこのブログを読んだ日にちょうど、News ZEROで
この特集をしていました。今自分に出来る事をやっていかなきゃと
つくづく思いました。

>Kaoriさん
ご無沙汰してます。僕もちょうどその放送を見ていました。アヴィジットが大きくなっていましたね。映画監督を目指して勉強していると聞き、うれしかったです。

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